給与所得控除の恩恵については先に触れたので、ここではより踏み込んで、家族に所得を分散することによる節税を紹介します。所得が400万円のとき、法人成りして自分に200万円、家族に200万円の給与を支給したとします。
この場合、家族トータルでの所得税と住民税の合計は、家族に給与を振り分けない場合と比較し、さらに約10万円安くなります。個人事業でも専従者給与というかたちで所得を分散することができますが、これには税務署への届出が必要になり、自由に給与を設定することはできません。
また、年間103万円以下の給与を家族に支給する場合、個人事業の場合は金額の大小にかかわりなく配偶者控除や扶養控除は適用できなくなります。それが、法人成りした場合は適用できます。よってここでも税金が安くなります。
個人事業の場合、生命保険料は生命保険料控除として最大5万円の控除しかありません。ところが法人の場合は必要経費に算用できます(ただし、保険の種類によってはできないものもありますので注意が必要です)。また退職金についても、個人事業の場合は事業主のものでも専従者のものでも経費に算入することはできません。それが法人の場合は経費に算入することができます。もう一つ、賃貸住宅にお住まいの場合、家賃の一部を一定の計算方法で社宅として経費に算入できます。
個人事業の2年前の売上高が1,000万円を超えているとき、消費税が課税されますが、資本金が1,000万円未満の法人を設立した場合、もう2年間消費税が免税となります。
赤字を7年間繰り越せる
個人事業の場合は、事業に赤字がでたとき、それを3年間まで繰り越して利益と相殺できます。また、株式売買による譲渡損も同様に相殺できます。これに対し法人の場合、赤字を7年間まで繰り越すことができます。このため、数年間は赤字が続くようなことが予想されるときは、税金上大きく影響してきます。
個人事業の場合、相続が発生したとき事業用財産もすべて個人の所有財産として相続税の対象になります。このため多額の相続税が発生すると、時には事業の存続そのものが危ぶまれます。法人の場合は被相続人所有の株式に対してのみ相続税が課されます。法人所有の事業用財産には課税されません。よって事業が存続しやすくなります。ただし、法人が多額の資産を保有している場合、株式の評価額が大きくなります。この場合、事前に評価額を検討し、贈与や譲渡での相続対策を検討しておく必要があります。
また、後継者がいないときは、株式を他人に売却し事業の存続を図ることもできます。
個人事業は債務に対して事業主が無限責任を負います。これに対し法人の場合は、法律上「法人格」という別の人格が認められています。このため、代表者は自分の出資持分に対してだけ責任を負うこと (有限責任) になります。万が一会社が倒産したときでも、法人の債務を連帯保証していた場合を除き、個人の財産は保全されます。